オブザーバビリティとは?重視される背景やメリット、ツール選びのポイントも解説

システムが複雑化するにつれ、オブザーバビリティの重要性が高まっています。しかし、なかには具体的にどのような概念なのか、正確に把握しきれているか自信がない人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、オブザービリティの概要や従来のモニタリングとの違い、メリットなどを解説します。オブザーバビリティの実現方法も解説するため、ぜひ参考にしてください。

オブザーバビリティとは

「オブザーバビリティ(Observability)」とは、「Observe(観察する)」と「Ability(能力)」を、組み合わせた造語です。日本語でいうと、「可観測性」や「観察する能力」を意味します。ITシステムにおける運用管理では、システムの状態を観察して異常を検知し、異常がどこで・なぜ起こったのかを把握する仕組みや能力の指標です。

モニタリング(監視)との違い

オブザーバビリティは、従来の「モニタリング」と混同されやすい傾向があります。モニタリングとは、その名のとおりシステムやアプリケーションの状態を、監視することです。一方、オブザーバビリティは監視だけでなく、異常が発生した原因の特定も含まれます。つまり、モニタリングは、オブザーバビリティのプロセスの1つといえるでしょう。

オブザーバビリティを高める3つの要素

オブザーバビリティを高めるためには、データの収集・分析・可視化の3つの要素が必要です。それぞれの要素について、以下で詳しく解説します。

1.データの収集

システムやアプリケーションの状態を把握するためには、データの収集が不可欠です。収集するデータのなかでも、システムやアプリケーションの状態を把握するうえで、とくに重要なデータを「シグナル」と呼びます。

2.データの分析

集めたデータは、パフォーマンスの最適化やセキュリティ監視、トラブルシューティングなどを、目的として分析します。データの意味するところを把握し、構成要素の関係性を理解することが大切です。

3.データの可視化

オブザーバビリティを高めるためには、運用者がデータを分析しやすいよう、データの可視化に取り組むことも重要です。データを視覚的、直感的に把握できるようなツールを導入するとよいでしょう。また、コンピューターやデバイス同士の接続形態を表す「ネットワークトポロジー」の作成も、有効です。

オブザーバビリティを高めるために収集するデータ

オブザーバビリティを高めるために収集する主なデータは、以下の3種類です。

・ログ

・メトリクス

・トレース

それぞれの要素について、以下で詳しく解説します。

ログ

ログとは、システムの動作履歴のことです。データの送受信や異常など、システム内で起こったイベント(現象や動作)を、テキストベースで記録したものを指します。

メトリクス

メトリクスとは、システムの状態やパフォーマンスに関する、測定値(定量データ)のことです。たとえば、メモリ使用量やCPU使用料などを指します。

トレース

トレースとは、アプリケーションを処理するうえで起こったリクエスト構造や、呼び出されたコンポーネントでの処理時間などを表すデータのことです。これによって、問題が起こった場所を特定できる可能性が高まります。

オブザーバビリティが重視される背景

オブザーバビリティが重視される背景には、次のような理由があります。

・システム構成の複雑化

・「DevOps」の普及

それぞれの理由について、以下で詳しく解説しましょう。

システム構成の複雑化

クラウドならではの利点を活かした「クラウドネイティブ」が普及した結果、システムの構成が複雑化し、マイクロサービスと呼ばれるアプローチが用いられるようになりました。

マイクロサービス化されたアプリケーションは、複数の機能やサービスが複雑に連携して動作するため、問題発生時の原因特定は容易ではありません。その結果、問題の原因特定をリアルタイムで行える、オブザーバビリティの需要が高まりました。

「DevOps」の普及

「DevOps(デブオプス)」とは、開発担当者と運用担当者が相互に連携・協力する開発手法のことです。近年はDevOpsの普及にともない、開発者が運用領域に関与する必要性が増加しています。その結果、アプリケーションの状態を多角的に監視する必要性が増し、オブザーバビリティの需要が高まりました。

オブザーバビリティを高めるメリット

オブザーバビリティを高めると、次のようなメリットを期待できます。

・システムの状態をリアルタイムで確認できる

・開発チームの生産性が高まる

・UI/UXの向上につながる

・「DevOps」の実現を後押しできる

それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。

システムの状態をリアルタイムで確認できる

オブザーバビリティが高まれば、システムで問題が発生した際にも、迅速な対応が可能です。また、データを収集する頻度を増やせば、システムの状態をリアルタイムで確認することもできます。

開発チームの生産性が高まる

問題の原因特定が容易になれば、調査にかかる手間が削減されます。結果的に、開発チームの生産性が高まり、競合との優位性を向上させることにもつながるでしょう。

UI/UXの向上につながる

従来のモニタリングは、「システムに問題が起きていないか」という観点で行われるものでした。一方、オブザーバビリティは、UXを意識して「システムがユーザーの要件を満たし、適切に機能しているか」という観点から、システムを監視します。異変が起きた原因まで分析することは、サービスレベルの維持に役立ち、UI/UXの向上をもたらすでしょう。

「DevOps」の実現を後押しできる

システムの稼働状況を、さまざまな視点から監視できるような仕組みを整えれば、「DevOps」の実現に一歩近づけます。開発・運用のコラボレーションは、ビジネスにもプラスの影響をもたらし、企業の成長へとつなげることが可能です。

オブザーバビリティの実現方法

それでは、一体オブザーバビリティを実現させるには、どのようなことを行えばよいのでしょうか。ここでは、オブザーバビリティの実現方法について解説します。

支援ツールを導入する

オブザーバビリティを高めるためには、ログ・メトリクス・トレースの3つのデータを収集する必要があります。そのためには、それぞれのデータを収集できる監視ツールの導入が欠かせません。また、収集したデータを可視化したり、分析したりする仕組みも必要です。支援ツールには、既成のソリューションを活用するだけでなく、独自のツールを開発する手段もあります。

企業文化や考え方を変える

オブザーバビリティを高めるためには、ただツールを導入するだけでは不十分といえます。運用者がオブザーバビリティに関する理解を深めないと、従来の監視ツールから置き換わっただけになってしまい、効果的な活用を期待できません。また、開発と運用の連携も不可欠です。オブザーバビリティの実現には、支援ツールの導入とともに、企業文化や考え方も変える必要があるでしょう。

オブザーバビリティの導入手順

オブザーバビリティの基本的な導入手順は、以下のとおりです。

1.監視対象と目標値の設定

2.収集するデータと方法の検討

3.監視ツールの選定

4.メトリクスの設計・実装

5.ログの収集・分析

6.トレーシングの実装

7.ダッシュボードの作成

8.アラート通知の設定

まずは、サービスの性能やセキュリティなど、監視対象と目標値を設定します。次に、収集するデータとその方法を検討し、自社のニーズに合わせた監視ツールを選定しましょう。

そして、監視対象から収集するメトリクスを設計・実装し、ログを収集するための仕組みをつくります。トレーシングを実装したら、データを可視化するためのダッシュボードを作成し、異常を検知したときのアラート通知を設定して完了です。

オブザーバビリティツールを選ぶ際のチェックポイント

オブザーバビリティツールを選ぶ際は、次のポイントをチェックするとよいでしょう。

・既存ツールとの連携機能

・使いやすさ

・データ提供のスピード感

・データの可視化機能

・コンテキストの提供機能

それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

1.既存ツールとの連携機能

新たなツールを導入する際は、既存ツールと連携できるかを確認することが重要です。検討しているツールが、既存の環境や重要度の高いソフトウェアで使われている言語、フレームワークに対応していることを確認してから導入しましょう。

2.使いやすさ

ツールの使いやすさも、重要です。ツールの使い勝手が悪いと、ワークフローへの組み込みが困難となってしまいます。ツールとしての使いやすさや、分かりやすさを重視したうえで、運用者が使いやすいサービスを選定しましょう。

3.データ提供のスピード感

データ提供のスピード感も、大切なポイントです。データのリアルタイム提供が可能なツールを選べば、問題を素早く把握できます。リアルタイムのモニタリングが可能なツールや、リアルタイムアラートが搭載されたツールがおすすめです。

4.データの可視化機能

多彩なダッシュボードなど、データの可視化機能もチェックしましょう。インサイトを直感的に理解できるツールを選べば、システムの状況を素早く把握することが可能です。

5.コンテキストの提供機能

オブザーバビリティツールを導入するなら、インシデント発生時の影響範囲やコンポーネントとの相関性などを、素早く理解できる機能が搭載されているツールがおすすめです。システムの状態を表すコンテキストを提供するツールを選べば、オブザーバビリティをより一層実現しやすくなるでしょう。

オブザーバビリティを高めるなら「Dynatrace」がおすすめ

オブザーバビリティツールを検討中なら、「Dynatrace(ダイナトレース)」がおすすめです。以下では、Dynatraceについて詳しく解説します。

業務システムのパフォーマンスをリアルタイムに監視

Dynatraceは、業務システムのパフォーマンスをリアルタイムに監視するAPM&オブザーバビリティプラットフォームです。1つのプラットフォームで、データ収集から依存関係のマッピング、トラブル対応まで一貫して行えます。情報の一元管理が可能なため、ステークホルダー全員が状況をスムーズに把握できるでしょう。

また、スクリプトやアプリケーションなど、専門知識がなくても利用可能な手軽さも、魅力の1つです。

AIがトラブルの原因を特定

DynatraceにはAIが搭載されているのもポイントです。トラブル発生時には、AIが素早く根本原因を特定してくれます。スペシャリスト人材がいなくても、的確かつ迅速なトラブル対応が可能です。

まとめ

オブザーバビリティとは、システムを監視し、異常が起きたときに発生原因を特定する仕組みや能力のことです。オブザーバビリティを高めれば、問題発生時にも迅速に対処でき、開発チームの生産性向上やUI/UXの向上につながります。まずは、データの収集・可視化・分析の仕組みを整えるために、支援ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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