SLAとは何ですか?システム運用でのSLA導入理由とメリットは?

SLAは、サービス提供者とユーザーとの間で合意されたサービスの質や性能基準を明確にする契約です。SLAには多くの項目がありますが、自社に必要な内容を盛り込む必要があります。

そこで本記事では、SLAの基本的な概念と、その導入によって得られるメリット、さらに具体的なSLA項目について詳しく解説します。

本記事を最後までお読みいただくことで、システムの信頼性を高め、利用者満足度を向上させることに役立つので、是非とも最後までお読みください。

SLAとは?

SLAとは、Service Level Agreementの略で、日本語では「サービスレベル合意」と訳されます。これは、サービス提供者とユーザーとの間で合意されたサービスの質や性能基準を明確にする契約のことを指します。

SLAの主な目的は、サービスの信頼性を確保し、利用者の満足度を向上させることです。また、サービス提供者にとっても、明確な基準があることで、サービスの品質管理がしやすくなります。

このように、SLAはサービス提供者とユーザーの双方にとって重要な契約であり、システム運用において欠かせない要素となっています。

SLAの3つの種類

SLAは、サービス提供者とユーザーの間で合意されたサービスの質や性能基準を明確にする契約ですが、その種類は大きく3つに分類されます。それぞれの種類には異なる特徴と適用範囲があり、適切なSLAを選定することが重要です。

1.顧客レベル SLA

顧客レベルSLAは、特定の顧客や顧客グループに対して提供されるサービスの品質や性能基準を定めた契約です。このタイプのSLAは、個々の顧客のニーズや期待に応じてカスタマイズされることが多く、顧客満足度を高めるために重要な役割を果たします。

顧客レベルSLAの主な特徴は、以下の通りです。

  1. 個別対応
    顧客ごとに異なる要件や期待に応じたサービスを提供するため、個別の契約内容が設定されます。これにより、顧客の特定のニーズに対応することが可能となります。
  2. 柔軟性
    顧客のビジネス環境や状況に応じて、サービス内容や基準を柔軟に変更することができます。これにより、顧客の変化するニーズに迅速に対応することができます。
  3. 詳細な定義
    サービスの範囲、品質、対応時間など、具体的な項目が詳細に定義されます。これにより、サービス提供者と顧客の間で期待値のズレを防ぐことができます。

顧客レベルSLAを導入することで、顧客との信頼関係を強化し、長期的なビジネスパートナーシップを築くことが可能となります。

2.サービスレベル SLA

サービスレベルSLAは、特定のサービスに対して設定されるSLAの一種です。このタイプのSLAは、特定のサービスの性能や可用性、応答時間などの具体的な基準を定めることを目的としています。

サービスレベルSLAの主な利点は、サービスの品質を明確に定義することで、利用者が期待するサービスの水準を理解しやすくなる点です。また、サービス提供者にとっても、明確な基準を設定することで、サービスの品質管理が容易になります。これにより、トラブル発生時の対応が迅速かつ適切に行われることが期待されます。

さらに、サービスレベルSLAは、サービスの改善や最適化の指標としても機能します。定期的な評価と見直しを行うことで、サービスの品質向上を図ることができます。これにより、利用者の満足度を高め、長期的な信頼関係を築くことが可能です。

3.マルチレベル SLA

マルチレベルSLAは、異なるレベルのサービス契約を組み合わせて、複数のユーザーやサービスに対応するためのものです。このタイプのSLAは、企業が提供するサービスが多岐にわたる場合や、異なる部門や顧客グループに対して異なるサービスレベルを提供する必要がある場合に特に有効です。

マルチレベルSLAは、以下の3つのレベルで構成されることが一般的です。

  1. 企業レベル
    全社的なサービス基準を定めるもので、全てのユーザーや部門に共通する基本的なサービスレベルを規定します。
  2. 顧客レベル
    特定の顧客や顧客グループに対して、個別のサービス要件を定めるものです。これにより、顧客ごとのニーズに応じたカスタマイズが可能となります。
  3. サービスレベル
    特定のサービスやアプリケーションに対して、詳細なサービス基準を設定します。これにより、各サービスの特性に応じた適切な管理が行えます。

マルチレベルSLAを導入することで、企業は柔軟かつ効率的にサービスを提供できるようになります。また、各レベルでの明確な基準設定により、サービスの品質管理が容易になり、顧客満足度の向上にも寄与します。

SLAで得られるメリット

SLAを導入することで、企業やサービス提供者は多くのメリットを享受できます。以下に、SLAの導入によって得られる主なメリットを紹介します。

サービス範囲が明確になる

SLAを導入することで、サービス提供者とユーザーの間で提供されるサービスの範囲が明確になります。具体的には、どのようなサービスが提供されるのか、どの程度の品質や性能が期待できるのかが明文化されるため、双方の認識のズレを防げます。

また、サービス範囲が明確になることで、ユーザーからの問い合わせやクレームに対しても迅速かつ適切に対応が可能です。

さらに、サービス範囲が明確であることは、サービス提供者にとっても大きなメリットです。提供するサービスの範囲が明確であることで、リソースの適切な配分や効率的な運用が可能となり、結果としてコスト削減やサービス品質の向上につながります。

トラブル防止や迅速な解決が可能となる

SLAを導入することで、トラブル防止や迅速な解決が可能となります。まず、SLAにはサービスの提供範囲や品質基準が明確に記載されているため、サービス提供者とユーザーの間で期待値のズレが生じにくくなります。

さらに、万が一トラブルが発生した場合でも、SLAに基づいて迅速かつ適切な対応が求められるため、問題解決のスピードが向上します。

また、SLAには問題解決のためのエスカレーションプロセスも含まれていることが多く、これにより複雑な問題でも迅速に上位の専門家や管理者に引き継ぐことができ、結果として、ユーザーの満足度が向上し、サービス提供者の信頼性も高まります。

信頼を得ることができる

SLAを導入することで、サービス提供者はユーザーに対して明確なサービス基準を提示することができます。これにより、ユーザーは提供されるサービスの質や性能について具体的な期待を持つことができ、安心してサービスを利用することが可能です。

信頼はビジネスの成功において非常に重要な要素です。信頼関係が築かれることで、ユーザーは長期的にサービスを利用し続ける可能性が高まり、結果として顧客ロイヤルティの向上にもつながります。

以上のように、SLAを導入することで、ユーザーとの信頼関係を築き、ビジネスの成長を促進することができるのです。

システム運用におけるSLAの項目

システム運用におけるSLAには、いくつかの重要な項目があります。

これらの項目を明確に定義することで、サービス提供者とユーザーの間で期待されるサービスの質や範囲を明確にし、トラブルを未然に防ぐことができます。以下に、システム運用における主要なSLA項目を紹介します。

前提条件

SLAを策定する際には、まず前提条件を明確にすることが重要です。前提条件とは、サービス提供者とユーザーが合意する基本的な事項であり、これに基づいて具体的なサービスレベルが設定されます。前提条件を明確にすることで、双方の期待値を一致させ、後々のトラブルを防ぐことができます。

具体的には、以下のような項目が前提条件に含まれます:

  1. サービスの対象範囲
    どのシステムやアプリケーションがSLAの対象となるのかを明確にします。
  2. サービス提供時間
    サービスが提供される時間帯や休日対応など、運用時間を定義します。
  3. ユーザーの役割と責任
    ユーザーが遵守すべきルールや、提供者に対する協力事項を明示します。
  4. サービス提供者の役割と責任
    サービス提供者が果たすべき義務や責任範囲を明確にします。

これらの前提条件をしっかりと設定することで、SLAの効果を最大限に引き出すことができ、サービスの質を高めることが可能となります。

サービス範囲と内容

SLAにおける「サービス範囲と内容」は、提供されるサービスの具体的な範囲とその内容を明確に定義する重要な項目です。これにより、サービス提供者とユーザーの間で期待されるサービスのレベルや範囲についての誤解を防ぐことができます。

まず、サービス範囲には、どのシステムやアプリケーションが対象となるのか、またはどの地域やユーザーグループに対してサービスが提供されるのかを明示します。

次に、サービス内容については、提供される具体的なサービスには、システムの稼働時間、メンテナンスのスケジュール、サポートの対応時間、障害発生時の対応方法などが含まれます。

このように、サービス範囲と内容を明確に定義することで、サービス提供者とユーザーの間で期待されるサービスレベルが一致し、トラブルの発生を未然に防ぐことができます。

サービスレベル

サービスレベルは、SLAの中でも特に重要な項目です。これは、サービス提供者がユーザーに対してどの程度の品質や性能を保証するかを具体的に示すものです。これらの基準を明確にすることで、サービスの信頼性を高め、ユーザーの期待に応えることができます。

サービスレベルを設定する際には、現実的かつ達成可能な目標を設定することが重要です。過度に高い目標を設定すると、達成できなかった場合に信頼を失うリスクがあります。

一方で、低すぎる目標ではユーザーの満足度を低下させる可能性があります。したがって、サービス提供者とユーザーの双方が納得できるバランスの取れた基準を設定することが求められます。

役割と責任

SLAにおける「役割と責任」は、サービス提供者とユーザーの双方がどのような役割を果たし、どのような責任を負うのかを明確にする重要な項目です。これにより、サービスの提供や利用において発生する可能性のある問題やトラブルを未然に防ぐことができます。

まず、サービス提供者の役割と責任についてです。サービス提供者は、契約に基づいて定められたサービスを提供する義務があります。これには、サービスの稼働時間、性能、セキュリティ対策などが含まれます。

一方、ユーザーの役割と責任も明確にしておく必要があります。ユーザーは、サービスを適切に利用するための基本的な知識やスキルを持つことが求められます。

このように、役割と責任を明確にすることで、サービス提供者とユーザーの間でのコミュニケーションが円滑になり、サービスの質を高めることができます。SLAにおいては、これらの項目を具体的に記載し、双方が理解し合うことが重要です。

提供未達時の対応と保証

SLAにおいて、サービス提供者が約束したサービスレベルを達成できなかった場合の対応と保証は非常に重要です。これにより、ユーザーは安心してサービスを利用することができます。具体的には、以下のような対応と保証が考えられます。

まず、提供未達時の対応として、迅速な問題解決が求められます。サービス提供者は、問題が発生した際に迅速に対応し、原因を特定して修正するためのプロセスを明確にしておく必要があります。

次に、保証としては、サービスレベルが達成されなかった場合の補償が挙げられます。これにより、ユーザーはサービスの信頼性に対する安心感を持つことができます。

さらに、提供未達時の対応と保証を明確にすることで、サービス提供者自身もサービス品質の向上に努める動機付けとなります。これにより、サービス全体の品質が向上し、ユーザー満足度の向上にも繋がります。

SLAを作成するときのポイント

SLAを作成する際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。

まず、必要な項目を絞ることが大切です。SLAに盛り込むべき項目は多岐にわたりますが、すべてを網羅しようとすると複雑になりすぎてしまいます。自社のサービスにとって本当に重要な項目を選び、優先順位をつけて取り決めることが求められます。

次に、実現可能な範囲で取り決めることが重要です。過度に高い目標を設定してしまうと、達成できなかった場合に信頼を失うリスクがあります。現実的な目標を設定し、確実に達成できるようにすることで、サービスの信頼性を高めることができます。

また、SLAの内容は定期的に見直し、必要に応じて更新することも忘れてはいけません。定期的なレビューを行い、最新の状況に適したSLAを維持することが、長期的な信頼関係の構築につながる可能性が高いです。

必要な項目を絞る

SLAを作成する際には、必要な項目を絞ることが重要です。全ての可能性を網羅しようとすると、契約が複雑化し、管理が難しくなる恐れがあります。まずは、自社のサービスにとって最も重要な要素を特定し、それに基づいて項目を選定しましょう。

また、項目を絞ることで、サービス提供者とユーザー双方が理解しやすく、合意形成がスムーズに進むというメリットもあります。結果として、システムの信頼性が向上し、利用者満足度の向上にも繋がるでしょう。

さらに、定期的にSLAの内容を見直し、必要に応じて更新することも重要です。ビジネス環境や技術の進化に伴い、必要な項目や基準も変わる可能性があるため、柔軟に対応できる体制を整えておくことが求められます。

実現可能な範囲で取り決める

SLAを作成する際には、実現可能な範囲で取り決めることが非常に重要です。過度に高い目標を設定してしまうと、サービス提供者にとってもユーザーにとっても不満が生じる可能性があります。

また、実現可能な範囲で取り決めることで、トラブル発生時の対応もスムーズになります。これにより、ユーザーの満足度を維持し、長期的な信頼関係を築くことが可能です。

さらに、実現可能な範囲での取り決めは、サービス提供者のリソース管理にも寄与します。無理のない範囲での目標設定により、リソースの最適な配分が可能となり、効率的な運用が実現します。

まとめ

SLAは、サービス提供者とユーザーの間で合意されたサービスの質や性能基準を明確にする重要な契約です。SLAを適切に設定することで、サービス範囲が明確になり、トラブルの防止や迅速な解決が可能となり、信頼を得ることができます。

システム運用におけるSLAの項目としては、前提条件、サービス範囲と内容、サービスレベル、役割と責任、提供未達時の対応と保証が含まれます。これらの項目をしっかりと取り決めることで、サービスの信頼性を高め、利用者満足度を向上させます。

最後に、SLAを作成する際には、必要な項目を絞り、実現可能な範囲で取り決めることが重要です。これにより、現実的で効果的なSLAを構築することができ、長期的な信頼関係を築くことができます。

本記事を通じて、SLAの重要性とその具体的な活用方法について理解を深めていただけたなら幸いです。システム運用の信頼性向上と利用者満足度の向上に向けて、ぜひSLAの導入を検討してみてください。

この記事の著者

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ReSM(リズム)サービス担当者
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